こんにちは。今回は、我が家の子どもたちとの日常から学んだ「メタ認知」についてのお話をしたいと思います。

最近、小学二年生の息子と漢字の学習をしていたときのこと。習ったはずの漢字を思い出せず、しばらく黙って考えていた息子が、ふと「これ、たぶんわからないと思う」と言いました。その瞬間、「あ、これはメタ認知の始まりだな」と感じたのです。

メタ認知とは、簡単に言えば「自分の考えや行動を客観的に見つめる力」のことです。心理学者ジョン・フラベルによって提唱された概念で、「自分が何を知っていて、何を知らないかを知る」力とも表現されます。

たとえば、「この問題は難しそうだから、もう一度教科書を見て確認しよう」と思ったり、「この単語は覚えたけど、他のはまだ不安だな」と自覚したりすることが、まさにメタ認知の働きです。この力は学習の質を大きく左右します。

では、なぜメタ認知が記憶の定着に有効なのでしょうか?

それは、自分が理解できていないことを自覚することで、無意識に流してしまう「わかったつもり」を防げるからです。「覚えた」「理解した」と思い込んでいるだけでは、テストのときに「あれ、何だったっけ?」と困ることがありますよね。

メタ認知が働いていると、自分の理解の浅さに気づくことができます。すると、自然と復習の必要性を感じ、学習内容を再確認する流れが生まれます。この“自発的な復習”こそが、記憶の定着に大きく貢献するのです。

では、このメタ認知をどうやって育てていけばよいのでしょうか?

1. 「どこがわからなかった?」と聞く

子どもが問題を間違えたとき、「なぜ間違えたの?」ではなく、「どこがわからなかった?」と聞くことで、自分の理解を振り返るきっかけになります。問いかけを通して、自分の認知状態に気づくことができるようになります。

2. 学習後に「ふりかえりタイム」を設ける

我が家では、学習が終わったあとに「今日、何ができるようになった?」「まだちょっと不安なところはある?」といった質問をするようにしています。これにより、自分の学習状態を言語化する力が育ちます。

3. 学習の計画と結果を比べてみる

「今日は10問解く予定だったけど、実際は8問しかできなかった。どうしてだろう?」と振り返る時間を持つことで、自分の行動と結果の関係を客観的に見る習慣がつきます。

ここでは、メタ認知をうまく活用した具体的な学習法をご紹介します。

● 自作テストでチェック

一度学習した内容について、自分で簡単なテストを作って解いてみる方法です。「この問題はスラスラ解けた」「こっちは少し迷った」など、自分の理解度を確認することができます。間違えたところが“まだ覚えていない”部分として明確になります。

● 教えることで理解を深める「ピア・ティーチング」

誰かに説明するためには、自分がきちんと理解している必要があります。子どもに「お母さんにも教えてみて」と頼むと、「えーっと、たしかこれはね……」と考えながら話してくれます。これが、まさにメタ認知の実践。理解が曖昧な部分に気づくきっかけになります。

● 目標と達成のギャップを記録する「学習ログ」

「今日の目標」「実際にやったこと」「気づいたこと」をノートに書く習慣は、メタ認知力を高めるのに非常に効果的です。最初は親が一緒に書いても良いでしょう。自分の行動を客観的に振り返る訓練になります。

メタ認知は、大人が教え込むものではなく、子ども自身の中に育っていく力です。ただ、その芽が伸びやすい環境や問いかけを大人が与えることは、とても重要です。

学ぶとは、自分自身を知ること。息子が「わからないかも」とつぶやいた小さな一言には、大きな成長の兆しがありました。

子どもたちが自分の思考や感情と上手につき合いながら、主体的に学んでいけるよう、これからも日々の生活の中で寄り添っていきたいと思います。