教育現場で使える心理学:バンデューラのモデリング理論
子どもが新しいことを学ぶとき、必ずしも直接教えられたことだけを吸収するわけではありません。親や先生、友達の行動を見て、それを真似することで学ぶことも多いのです。このように、他者の行動を観察し、それを模倣することで学習が進むことを「モデリング」といいます。
この理論を提唱したのが、心理学者アルバート・バンデューラです。バンデューラの「モデリング理論」は、教育現場や家庭での子育てにおいて非常に重要な考え方です。今回は、このモデリング理論について詳しく解説し、家庭や学校での活用方法を紹介します。
モデリング理論とは?
モデリング理論は、「人は他者の行動を観察し、その行動を模倣することで学習する」という考え方に基づいています。特に子どもは、周囲の大人や友達の行動をよく見て、それを真似しながら成長します。
バンデューラの有名な実験に「ボボ人形実験」があります。この実験では、大人がボボ人形(パンチングバッグのような人形)を叩いたり蹴ったりする様子を子どもたちに見せました。その後、子どもたちをボボ人形と一緒にしたところ、多くの子どもが大人と同じように人形を叩いたのです。
この結果から、子どもは単に「言葉で教えられたこと」だけでなく、「目の前で見た行動」も強く影響を受けることがわかります。これは、教育や子育てにおいて非常に重要なポイントです。
モデリング理論の4つの要素
バンデューラは、モデリングが成立するために次の4つの要素が必要であると述べています。

- 注意(Attention)
- 子どもが対象となる行動に注意を向ける必要があります。
- 例えば、親が読書をしている姿を子どもに見せるとき、スマホを触りながらではなく、集中して本を読むことで、子どもの注意を引くことができます。
- 保持(Retention)
- 観察した行動を記憶し、それを再現できるようにする必要があります。
- 学校で先生が問題の解き方を示した後、子どもがその解き方を思い出しながら実践できることが大切です。
- 再生(Reproduction)
- 記憶した行動を実際に再現できる能力が必要です。
- 例えば、親が礼儀正しく挨拶をする姿を見せることで、子どもも自然と同じような挨拶ができるようになります。
- 動機づけ(Motivation)
- 行動を模倣するための動機が必要です。
- 「あの子が頑張って勉強して成績が上がった」という話を聞くと、「自分も頑張れば良い結果が得られるかも」とやる気が湧きます。
モデリング理論の教育現場・家庭での活用例
1. 親が学習や読書をする姿を見せる
子どもに「勉強しなさい」と言うよりも、親自身が楽しそうに学習や読書をする姿を見せることで、自然と子どもも学ぶ姿勢を身につけます。例えば、親が新聞や本を読む習慣を持つと、子どもも「読書は楽しいもの」と感じるようになります。
2. 成功した子どもの事例を共有する
学校や家庭で、「努力して成績を上げた子ども」の話をすることで、他の子どもたちに刺激を与えます。特に、身近な友達や先輩の成功事例は、大きな影響を与えることがあります。
3. 教師が積極的に模範を示す
学校では、先生が生徒の手本となることが重要です。例えば、先生が授業中に積極的に質問し、考える姿勢を見せることで、生徒も「質問することは良いこと」と思えるようになります。
4. 友達同士のポジティブな影響を活用する
学習環境では、子ども同士の影響も大きいです。例えば、学級内で「お互いに教え合う」文化を作ることで、子どもたちは積極的に学習し、良い行動を互いに真似し合うようになります。
5. スポーツや習い事での活用
スポーツや習い事では、優れたプレイヤーや先輩の動きを観察し、それを真似することで上達します。例えば、サッカーのドリブルが上手な選手の動きを観察し、それを実践することでスキルが向上します。
まとめ
バンデューラのモデリング理論は、子どもが学ぶ過程で非常に重要な役割を果たします。親や教師が「良い手本」を示すことが、子どもの成長につながるのです。
- 親自身が学習する姿を見せる
- 成功した子どもの事例を伝える
- 先生や友達の行動を学びの機会にする
こうした工夫を取り入れることで、子どもは自然と良い習慣を身につけ、成長していきます。

子どもに何かを教えたいとき、「言葉で指示する」だけでなく、「自分が手本を見せる」ことが最も効果的です。日常生活の中で、ぜひモデリング理論を活用してみてください!